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今年の1月、久しぶりに森重氏を訪ねる機会がありました。前回お会いした時よりも若々しい印象を受けたのは、自慢の髭を剃られたせいかも知れません。森重氏との出会いから9年の月日が流れ、人形をとりまく環境もずいぶん変わっているようです。
「最近、江戸時代の打掛を使った人形が少なくなりましたね。一枚つぶしてでも打掛を着た人形を創ってみては」と私。
「古裂が年々少なくなってきており、特に人形に着せられる良いものを手に入れるのが困難になっているんです。価格は高くなりますが、やってみましょう」
と森重氏に快諾をいただきました。しかし、あまりにも私が〈古裂が無くなっていく〉ことばかり話すので森重氏は、

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「私の人形はお顔が特徴で、その顔に会う着物が古裂であるということなんです。古裂が少なくなっても、この人形は生き続けますよ」
と、少し語気を強めて話されました。これからは、お客様が箪笥の中にずっとしまっていた思い出のきもの……おばあちゃんの普段着、お母さんの大切にしていたきもの……を朋人形に着せて、いつまでもそばに置いて戴ける・・・そんな仕事もして行きたいと、熱い気持ちを語る重森氏。そんな森重氏をとても頼もしく思い、これからも良い人形を世に出し続けてくださいとお願いをして、奈良の工房を後にしました。
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