工房朋
第三回
思い出きものが人形に生まれ変わる
工房朋の市松人形


写真集をみて一目ぼれ。本物に会いに奈良へ。

私と朋人形の出会いは今から9年前に遡ります。
呉服のお客様である中島和枝様のお宅を訪問したときのことです。
「面白いものをお見せしましょう」と、持ってこられたのが
工房朋の『市松人形たち』(毎日新聞社刊)という写真集でした。
そこには江戸時代の打掛などを着た、実にリアルで、
それでいて温もりを感じさせる人形たちがたくさん写っていました
古い着物のもつ不思議な力もあったのですが、
朋の人形たちは顔が何とも素晴らしいのです。 聞いたところによると、
顔のモデルはこの人形の作家 ・森重春幸氏のご長男の朋君の幼顔だとのこと。
感動したら直ぐにでもホンモノを見たくなるいつものクセ(?)が出て、
さっそく工房がある奈良への旅路につきました。

 


とも人形、そして作家との運命の出会い

工房に並ぶ人形を一体一体時間をかけて見ている私に、森重氏は「あなたの店で展示会をしましょう」と、突然切り出されました(もちろん自己紹介はしていましたが)
朋の市松人形は〈ぜひウチで展示会をさせて欲しい〉という百貨店やギャラリーがたくさんあり、呉服店で(しかも九州で)総合的な展示会が開かれたケースはありませんでした。驚く私の表情を楽しむように、日程や宣伝方法が決められていきました。後日談ですが、森重氏は商談を持ちかけるわけでもなく、人形を実に楽しそうに見ている私に興味を持ったとのこと。人との出会い、そして相性とは実に不思議なものです。

 

朋人形と若旦那

 


QTVRパノラマ店内 特別公開その1 朋人形展示風景

←をクリックすると、まるきん呉服店内に展示された
朋人形を パノラマで360度見ることが出来ます。
(QuickTimeパノラマムービー:616Kbyte)

QuickTimeが必要です。
(要QuickTimeプラグイン)

 


この世に一つだけの人形をオーダー

今年の1月、久しぶりに森重氏を訪ねる機会がありました。前回お会いした時よりも若々しい印象を受けたのは、自慢の髭を剃られたせいかも知れません。森重氏との出会いから9年の月日が流れ、人形をとりまく環境もずいぶん変わっているようです。 「最近、江戸時代の打掛を使った人形が少なくなりましたね。一枚つぶしてでも打掛を着た人形を創ってみては」と私。 「古裂が年々少なくなってきており、特に人形に着せられる良いものを手に入れるのが困難になっているんです。価格は高くなりますが、やってみましょう」 と森重氏に快諾をいただきました。しかし、あまりにも私が〈古裂が無くなっていく〉ことばかり話すので森重氏は、

 

「私の人形はお顔が特徴で、その顔に会う着物が古裂であるということなんです。古裂が少なくなっても、この人形は生き続けますよ」 と、少し語気を強めて話されました。これからは、お客様が箪笥の中にずっとしまっていた思い出のきもの……おばあちゃんの普段着、お母さんの大切にしていたきもの……を朋人形に着せて、いつまでもそばに置いて戴ける・・・そんな仕事もして行きたいと、熱い気持ちを語る重森氏。そんな森重氏をとても頼もしく思い、これからも良い人形を世に出し続けてくださいとお願いをして、奈良の工房を後にしました。

 

朋人形QTVRオブジェクト 特別公開その2 朋人形の姿

←をクリックすると、朋人形を360度回転させて眺めることができます。角度によってかわる朋人形の表情をお愉しみ下さい。 (312Kbyte)

QuickTimeが必要です。
(要QuickTimeプラグイン)

 


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私の店に年に一回、1月末から2月初めに大勢の朋人形たちがやってきます。その数は全国で開かれる展示会の中でいちばん多いとか。嬉しいことに毎回二千人以上のお客様が集まる人気展となり、これまでに370余の朋人形をお客様に連れて帰って戴いています(みんな元気にしてるかな〜)まるきん呉服店では、これからもたくさんの朋人形たちをご紹介していきたいと思っています。

 

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